独立を考えるとき、多くの人は「何をやるか」を先に決めます。事業内容、価格、サービスの中身。もちろんそれは大事です。ただ自分がここ数年で強く感じているのは、それ以上に「やらないこと」を先に決めておくべきだということです。
自分の場合、電気工事の現場を長くやってきて、その後Web制作やレンタルスペースの事業を増やしていきました。仕事の幅が広がると、頼まれごとも増えます。断りにくい話も出てきます。そこで軸がないと、気づけば自分の時間も体力も、望んでいない方向にすり減っていきます。
自分が決めているのは、安すぎる金額の仕事は受けないということです。安さには理由があります。技術も、安全も、保証も削った先にある金額だからです。適正価格というのは、その三つを積み上げた合計だと思っています。ここを曖昧にしたまま独立すると、価格競争に巻き込まれ、体力だけを消費して終わります。自分は電気工事でも消防設備の仕事でも、この考えは変えていません。
もう一つ、自分の中で決めているのはテイカーにならないということです。関わる人がそれぞれ得をする、順番に良い流れが生まれる構造を作りたいと考えています。誰かから搾り取って自分だけが得をする形は、長く続きません。独立するとどうしても目先の売上に気を取られがちですが、そこで自分だけが得をする選択を積み重ねると、いずれ協力してくれる人がいなくなります。
体を壊す働き方はしない
自分は2025年2月、電気工事の現場で転落し、右膝の前十字靭帯断裂と半月板損傷という大ケガを負いました。車の運転も、自宅内を歩くこともままならない期間が続きました。そのとき収入を支えてくれたのは、体を動かさなくても回るレンタルスペース事業でした。
このとき強く思ったのは、体を資本にする働き方だけに全てを賭けてはいけないということです。独立すると「自分が動けば動くほど稼げる」という状態に安心してしまいがちです。ですがそれは裏を返せば、自分が動けなくなった瞬間に事業全体が止まるということです。自分はこの経験があったから、体を動かして成立する仕事と、仕組みで回る仕事の両方を持つという形にたどり着きました。
独立前に何をやるかを決めるのと同じくらい、何をやらないかを決めておくことです。安売りをしない、誰かを踏み台にしない、体一つに事業の全てを乗せない。この三つを自分の中で決めておいたことで、ケガという想定外の出来事があっても事業が止まらずに済みました。やらないことを先に決めておくと、迷う場面が減ります。迷いが減れば、限られた時間とエネルギーを、本当にやるべきことに使えるようになります。独立を考えているなら、まずここから固めることをすすめます。