事業を三本柱でやっていると、自分がどこで何をしているかが見えにくくなる時がある。電気工事の現場では自分が手を動かす人間だ。でもレンタルスペースの運営やWeb制作の仕事では、自分は前に出る必要がない場面の方が多い。

Pieris を松戸で始めてから、この違いをよく考えるようになった。レンタルサロンという場所は、自分が何かを教えたり売ったりする場ではない。使ってくれる人がそこで自分の仕事をするための箱だ。自分の役割は場を整えて、裏側の仕組みを回すことに徹する。前に立たない方が、その場はちゃんと育つ。

電気工事の現場だと、これは逆になる。危険を伴う作業では自分が主体的に動かないと成立しない。資格を取ってきたのも、自分がその場で判断できる人間でいるためだ。だから主役を譲るという発想は、事業のどこにでも当てはまるわけではない。場によって自分の立ち位置を変える必要がある。

ケガをしてから、この感覚がさらにはっきりした。工事現場の最前線に戻れない期間、自分が動けなくても収入が止まらなかったのはレンタルスペース事業のおかげだった。あの時、自分が主役でなくても回る仕組みを持っていたことにどれだけ助けられたか。体を動かして成立する仕事だけに頼っていたら、ケガと同時に収入も止まっていた。

場を作る人間と、場で動く人間

独立や経営を考える時、多くの人は「自分が前に出て稼ぐ」ことを起点に考えると思う。それは間違っていない。手に職をつけて現場で結果を出す経験は、何にも代えがたい土台になる。自分も電気工事の世界でその土台を作ってきた。

ただ、事業を続けていく上では、自分が主役でいなくても回る場を一つでも持っておくことが強みになる。Web制作の仕事も同じで、作ったホームページやLINE公式アカウントが動き出したら、自分がそこに張り付いている必要はない。仕組みが代わりに働いてくれる。

サービスとは相手の負担を肩代わりすることだと考えている。場を作る側に回るというのは、自分が目立つことをやめて、相手が動きやすい環境を用意することだ。そこに徹すると、関わる人がそれぞれの立場で得をしていく。自分だけが得をする構造は長続きしない。順番に得をしていく数珠つなぎのような形を、事業のどこかに必ず作っておきたい。

主役を譲ることは、自分の存在感を消すことではない。裏側で場を支える役割に回るという選択だ。独立を考えている人には、自分が前に出る仕事と、後ろに回って支える仕事の両方を、事業のどこかに持っておくことを勧めたい。どちらか一方だけでは、何かが止まった時に全部が止まってしまう。