見積もりを出すとき、相手の顔色を見て金額を下げたくなる瞬間がある。安くすれば喜ばれる、関係が壊れないと考えてしまうからだ。実際には逆のことが起きやすい。安すぎる金額を提示すると、相手はその金額なりの仕事だと無意識に受け取ってしまう。技術や安全、保証にかけているコストが価格に反映されていなければ、それは相手にも伝わってしまう。

お金を濁すことは誠実さを濁すこと

適正価格というのは、技術・安全・保証を積み上げた合計額だと考えるようになった。値引きをして関係を保とうとするのは、実は自分の仕事の価値を自分で下げる行為になる。安すぎる金額には理由がある。その理由を相手に正直に説明できないなら、そもそもその金額で仕事を受けるべきではないと今は思っている。

お金の話を正直にするというのは、高い金額を押し通すことではない。なぜその金額なのかを、根拠を持って説明できる状態を作ることだ。電気・消防設備工事でもレンタルスペースでもホームページ制作でも、金額の裏側には必ず理由がある。その理由を隠さずに話せるようになってから、値引き交渉そのものが減った。理由が伝われば、相手も納得した上で契約してくれるようになったからだ。

正直さは戦略でもある

お金の話を濁す経営者は、自分の仕事の価値を自分自身が信じきれていないことが多い。価格の根拠を言葉にできるようになるまでには時間がかかった。今は、金額を伝えるときに気まずさを感じることはほとんどない。

経営を続けていく中で、お金の話をどう扱うかは、その人の経営そのものの姿勢を映す鏡のようなものだと感じるようになった。数字や理由を隠す経営は、いずれどこかで無理が出る。逆に、正直に話す経営は、多少の摩擦はあっても長く続けられる。自分はそちらを選びたいと思っている。