段階1「分解」業務を見える形にする
最初にやるのは、コードを書くことでも、ツールを選ぶことでもありません。
1時間ほどの時間をいただいて、相手の言葉を聞き直す作業です。
たとえば、ある経営者さんと新しいサービスを立ち上げようとしていた時のこと。
最初の打ち合わせで、その方は「これをやってほしい」と一つの依頼を口にされました。
聞いてみると、その一言の中には、性質の違う複数の業務がひとまとまりになっていたのです。
「集める」作業と、「整える」作業と、「判断する」作業は、似ているようで全然違います。
動詞で分けて並べ直してみると、ようやく業務の輪郭が見えてくる気がしています。
そこから、誰が何を判断するかを書き出していきます。
分解したものは、その場でノートに手書きしたり、簡単な図にしたりして、相手と一緒に「これで合ってますか?」と確認していきます。
この段階でコードは1行も書かない
仕組み化と聞くと、すぐにシステムやアプリの話だと思われがちです。
でも実際は、最初の段階で必要なのは人間側の言語化です。
業務の輪郭がぼんやりしたまま道具を選ぶと、後で必ず作り直しになります。
だから僕は、ここで急ぎません。むしろここを丁寧にやれるかどうかで、後の苦労がほぼ決まる気がしています。
業務の中身はお客さまごとに違うので、現地に伺ってその場で方向性を決めることもあります。
業種や仕事の中身が変わると、机の上だけで分解しきれないことの方が多いです。
段階2「型化」何度でも同じ結果が出る形にする
分解した業務を、次は「型」にします。
型とは、同じ手順を繰り返せば、同じ結果が出る形のことです。
具体的には、こういうものになります。
- チェックリスト(紙でもよい)
- テンプレート文書(Wordや Notion)
- 計算式の入ったスプレッドシート
- LINEで動く簡単なBot
- ボタン数個の簡易Webアプリ
この段階で初めて道具を選びます。
選ぶ基準はひとつだけです。経営者さんが、自分で触り続けられるかどうか。
どんなに高機能な道具でも、相手が触れない、開けない、直せないなら、型としては失格だと思っています。
僕がいなくなった後も使い続けてもらうために作っているので、ここは妥協できません。
まず型のまま動かしてみる
型を作ったら、まずは自動化を一切入れずに、その型のままで業務を回してもらいます。
業務の種類によっては、いきなり全部を仕組みに乗せてしまえる場合もあるし、しばらく型のままで様子を見たほうが安全な場合もある。時と場合によると思っています。
回らない部分が出てきたら、段階1の「分解」まで戻ります。戻ることを面倒くさがらないこと。これも仕組みを長持ちさせるコツのひとつかもしれません。
段階3「自動化」型を半分だけ自動で動かす
型がしっかり安定したら、ようやく自動化の話に入ります。
順番が逆だと、ほとんどの場合うまくいきません。
自分の事業を例にとります。
レンタルサロンPierisでは、予約・解錠・LINEでの問い合わせ対応まで仕組みに乗せています。動けない時期も、運営の裏側はほとんど止まらずに回り続けました。
一方で、掃除や、新しいセラピストさんを迎える時の打ち合わせなど、現場で判断が要る場面までは仕組みに乗せていません。
ここで大事だと思っているのは、10割を自動化しようとしないことです。
残った人間の判断は、むしろ経営者さんが本来やるべき意思決定の時間に変わります。
「判断を機械に任せきる」のではなく、「機械が下準備をしてくれた上で、人がちゃんと決める」形を目指しています。
ここでようやく、プログラミングや、APIの連携、生成AIといった道具が登場します。
多くの「DX失敗」の話を聞いていて感じるのは、段階1と段階2を飛ばして、いきなり段階3から入ってしまうことが原因なのではないかということです。
分解されていない業務を、型のないまま自動化しても、壊れたものが速く動くだけです。
「一緒に作る」とは、順番を守って隣に立つこと
3つの段階を並べると、こうなります。
- 段階1「分解」業務を見える形にする
- 段階2「型化」同じ結果が出る形にする
- 段階3「自動化」半分だけ自動で動かす
この順番を守って、経営者さんの隣に立ち続ける。これが「一緒に作る」の中身です。
経営者さんの代わりにやるのではなく、経営者さんが自分で続けていける形を、一緒に組み立てていく。
だからこの仕事は、「丸投げしたい人」とは合いません。
「自分でも手を動かしたい」「自分が分かる形で残しておきたい」という方と、いちばん噛み合います。
これは最初の打ち合わせで、お互いに確認することのひとつです。
段階3の自動化までやるかどうかは、その時の必要性で決めれば良いと思っています。やらない選択も普通にあります。
ただ段階1と段階2、分解して型にする工程は、経営者さん自身に一緒に立ち会っていただく前提です。ここを丸ごと任せてしまうと、出来上がった型が「自分で動かせる形」にならず、後から微調整したい時にも毎回外注が必要になってしまいます。