得意なことで稼ぐという誤解

「得意なことで稼ぐのが一番だ」という話を聞いたことがない人はいないと思う。独立を考えているとき、自分もそれを信じていた時期がある。得意なことを仕事にすれば、苦しまずに済むし、結果も出やすい。そう思っていた。

でも実際に仕事をしていくうちに、少しずつ違和感を覚えるようになった。

「得意」と「求められること」はズレている

自分はウェブサイトの制作をしている。技術的な部分はある程度得意だと思う。でも、クライアントが本当に必要としているのは「きれいなデザイン」でも「最新の技術」でもなく、「問い合わせが増えること」だったり「採用がうまくいくこと」だったりする。

得意なことと、相手が求めていることは、必ずしも一致しない。

自分が得意なことに集中しすぎると、知らないうちに「自分のやりたい仕事」を押し付けている状態になる。得意なことを軸に仕事を組み立てると、相手の課題よりも自分のスキルが先に立ってしまう。これは経営者としては危ういことだと、時間をかけて気づいた。

もう一つ、「得意なことが好きなこととは限らない」という問題もある。得意だから速くできる、ミスが少ない、そこまではいい。でも毎日それをやり続けることが苦痛になることもある。得意と好きを混同していると、仕事を続けるうちに消耗していく。自分にもそういう経験がある。

稼げるのは「求められていること」ができる人

長く仕事をしていて思うのは、稼ぎ続けている人は「求められることに応えられる人」だということだ。得意かどうかより、相手が何を必要としているかを正確に理解して、それに対して誠実に動ける人。

得意なことはあくまで手段であって、それ自体がゴールではない。

だから「得意なことで独立しよう」という考え方が完全に間違っているとは言わないけれど、それだけを軸にすると危うい。正確に言えば、「求められていることの中に得意なことを組み込む」くらいの順番で考えたほうが、現実には機能しやすい。

得意なことは、スタート地点のひとつに過ぎない。それよりも、誰のどんな困りごとを解決するのかを先に考える。そのほうが仕事は長続きするし、自分自身も無理をしなくて済む。

得意なことで稼ぐのは、入口としてはいい。でも出口を「求められること」に置いておかないと、どこかで行き詰まる。自分はそう考えている。