サービスの値段の決め方:安すぎる金額には理由がある

独立してしばらく経った頃、同業者の人と話していて「なんでそんなに安いんだろう」と感じることがあった。スキルも経験も自分よりずっとある人が、自分より低い金額で仕事を受けていた。不思議だったし、少し怖くもあった。

その人が手を抜いているわけでもない。むしろ丁寧で、クオリティも高い。それでも安い。なぜかと考えていくうちに、値段というのは「自分がどこに立っているか」の表明だということが、だんだんわかってきた。

安い値段をつけるとき、人は何かを避けている

値段を低く設定するとき、たいていの場合は「断られたくない」という気持ちが背景にある。自分も最初はそうだった。高い金額を提示して「高いですね」と言われることが怖い。だから先に値段を下げて、断られるリスクを減らそうとする。

でもこれは、じつはけっこうコストが高い判断だと思う。安くすれば受注できるかもしれない。ただ、その案件をこなしながら「この金額では割に合わない」という感覚が積み重なっていく。そして疲弊したまま次の仕事を探すことになる。値段を下げてリスクを回避したつもりが、別の形で消耗している。

もうひとつ、安い値段には「自分のサービスへの自信のなさ」が出ることがある。これも正直に言うと、自分にも覚えがある。実績が少ない時期は特に、強気な金額を出すことに根拠がないような気がしてしまう。でも実績と値段は、必ずしも比例するわけではない。経験が浅くても、その人にしか出せないものがあれば、それは値段に反映していい。

値段は、誰と仕事をするかを選ぶ手段でもある

値段を上げると、来るクライアントが変わる。これは体感として、かなりはっきりある。安い金額で受けていた頃は、細かい要求が多かったり、コミュニケーションがしんどかったりするケースが多かった。値段を見直してから、そういう摩擦が減った。

これは「高い客が偉い」という話ではない。金額に見合う仕事を依頼しようとする人は、それだけ真剣に検討しているということだと思う。安さだけで選ぶ人は、安さだけで別の人に乗り換えることもある。値段は、関係の質にもつながっている。

自分が今どんな値段設定をしているかを振り返ると、そこには「怖さを避けているのか、それとも自分の仕事への評価として出しているのか」という問いが浮かぶ。どちらから設定した金額なのかで、仕事の中身もその後の展開も、けっこう変わってくる。

安すぎる金額には、たいてい理由がある。その理由が何なのかを自分で把握しておくことが、値段を変える第一歩になると思っている。